Chodal Enharmonics (3)

 

引き続き例を見ていきましょう。Autumn Leavesの出だしの部分です。

Chordal Enharmonicsを理解していればmaj7、min7、dom7、min7(♭5)の4種類だけでもTensionの含まれたリッチなサウンドが得られることが分かるかと思います。

Tension noteがボトムに来るvoicingは独特のダークなサウンドが得られますが、音域やvoice leadingの流れによってはコード感が希薄になる場合もあるので注意が必要です。またギターだけで弾いていて良い響きがするvoice leadingでも、ベーシストのラインによっては濁って聴こえたりサウンドしない場合もあります。これはそのまま実際のアンサンブルにおけるvoicingの選択にも当てはまることなので、いろいろトライしてみてください。

 

さらにこのChordal Emharmonicsはシングルラインのソロにも当てはまります。コードトーンのアルペジオを使うだけでも適度にTensionの含まれたメロディーを作ることができます。

 

このように、ハーモニーのバリエーションが増えるとアドリブラインのボキャブラリーも同時に増えていくことが理解できるかと思います。繰り返しになりますが、大切なのはvoicingの種類をたくさん覚えることではなく、ひとつのコードの使い方、他の可能性を出来るだけ多く知ることです。

 

今回はごく基本的なものをご紹介しましたが、他のあらゆるコードにもChordal Enharmonicsは存在します。特にMelodic Minor Mode系のEnharmonics(maj7#5、minMaj7など)はジャズプレイヤーに広く用いられているものです。興味のある方は考察してみてください。

 

 

 

 

Chodal Enharmonics (2)

引き続き基本的なChodal Enharmonicsを見ていきます。

 

C-7 = A♭maj7(9) (no root)

C-7の構成音C (root)、E♭ (♭3rd)、G (5th)、B♭ (♭7th) が
A♭maj7にとってはC (3rd)、E♭ (5th)、G (maj7th)、B♭(9th)、となります。

このchordal enharmonicの関係も、『あるma7 chordにおいて、長三度上のmin7 chordがmaj7(9)として機能する』と捉えても良いし、『あるmaj7 chordのコードトーン3rdの音からmin7 chordを積むとmaj7(9)の響きがする』『あるmin7 chordは長三度下のmaj(9) chord (no root)と同じサウンドである』というようなイメージでも良いかと思います。

ではkeyを変えて、G#-7をEmaj7(9)として使った場合の例を見て見ましょう。こちらも分かりやすいようにE音(開放)をサポートしてみます。

 

min7(♭5)では2種類のenharmonicsを見てみましょう。

C-7(♭5) = A♭7(9) (no root)

Cmin7(♭5)の構成音C (root)、E♭ (♭3rd)、♭G (♭5th)、B♭ (♭7th) が
A♭7にとってはC (3rd)、E♭ (5th)、♭G (♭7th)、B♭(9th)、となります。

『あるdom7(9) chordと、その長三度上のmin7(♭5) chordとがEnharmonicな関係にある』

 

こちらもKeyを変えて

 

C-7(♭5) =  D7(♭9,♭13) (no root,5th) またはD7#5(♭9) (no root)

C-7(♭5)の構成音C (root)、E♭ (♭3rd)、♭G (♭5th)、B♭ (♭7th) が
D7にとってはC (♭7th)、E♭ (♭9th)、♭G (=F# / 3rd)、B♭(♭13th)または( =A# /  #5)、となります。

『あるdom7(9) chordと、その長二度(全音)下のmin7(♭5) chordとがEnharmonicな関係にある』

 

 

さてこれまで数あるChordal Enharmonicsの中からごく基本的なもの、maj7 chordのEnharmonics をひとつ、min7 chordのEnharmonics をひとつ、min7(♭5)のEnharmonics をふたつ見て来ましたが、これだけでもかなりハーモニーが広がると思います。

 

(つづく)

 

 

Chodal Enharmonics (1)

今回はChordal Enharmonicsという考え方をご紹介します。Enharmonic(異名同音)というのはC♯と D♭のように音名は異なるが同じピッチであることを言いますが、Chordal Enharmonicsというのは『あるコードを構成音が共通した別のコードとして捉える』ことを言います。

ひとつの和音の様々な別の使い方を知ること、ハーモニーの構造を多層的に把握することでより自由でバリエーションに富んだ演奏が可能になります。実際DROP2などのvoicingを習得した時点で、実はその何倍ものvoicingを得ていることになります。要は使い方を知っているか知らないか。

では基本的なものを見ていきましょう。

 

Cmaj7 = A-7(9) (no root)

CMaj7の構成音C (root)、E (3rd)、G (5th)、B (maj7th) が
A-7(9)にとってはC (♭3rd)、E (5th)、G (♭7th)、B (9th)、となります。

 

それではDROP2の各Inversionでサウンドを確認して見ましょう。Cmaj7の各InversionのボトムにA音をサポートしてみると、サウンドの違いが分かりやすいかと思います。

このCmaj7 = A-7(9)というchordal enharmonicの関係を、『あるmin7 chordにおいて、短三度上のmaj7 chordがmin7(9)として機能する』と捉えても良いし、『あるmin7 chordのコードトーン♭3rdの音からmaj7 chordを積むとmin7(9)の響きがする』『あるmaj7 chordは短三度下のmin7(9) chord (no root)と同じサウンドである』というようなイメージでも良いかと思います。

 

今度は違うkey、Gmaj7をE-7(9)として使った場合。こちらも分かりやすいようにE音をサポートしてみます。

どれも良いサウンドですが、特に3rd inv.はボトムにtension noteである9thが来ていてなかなかダークな響きがします。

 

さてこの時点でmaj7 chordのヴォイシングを四つ覚えたら実はmin7(9) chordも四つ知っている、ということになりますね!ハーモニーの習得というのは決してコードブックなどを見てヴォイシングの海の中から沢山の種類を暗記するようなものではなく、ひとつのコードの様々な別の響かせ方を理解することが大事です。

次回は同じくmaj7とmin7及びmin7(♭5)を使った、基本的かつ代表的なChordal Enharmonicsの例を挙げていきます。

 

(つづく)